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令和6年8月1日から10月31日まで募集を行った「令和6年度香川県空き家再生コンテスト」について、審査の結果、最優秀賞2点、優秀賞2点(順不同)が選出されました。
最優秀賞 (讃岐の宿 古今)
昭和56年に建てられた住宅を一棟貸しの民泊施設へ
改修後 改修前
改修後 改修前
改修後 改修前
物件データ
設計者・施工者 |
設計者:真島 美帆 施工者:株式会社谷本建設 |
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所在地 | 綾川町 |
敷地面積 | 1,132.98㎡ |
床面積 | 125.09㎡ |
工事費用 |
約1,000万円 |
改修後の用途 | 簡易宿所 |
特徴
香川県のほぼ中央に位置する、県内観光の拠点として活用されている民泊施設。
元々の所有者の「壊したくなかった」という強い思いを受け継ぎ、伝統的な日本建築の形はそのままに、極力元々の部材を活かした再生事例。コンセプトは「家自体を楽しめる宿」。
日本建築にマッチする囲炉裏やかまども設置されており、伝統的な日本家屋だけでなく、日本文化も楽しめる。
浴室の壁タイルを上張り施工したり、家族で和室の土壁の塗装やカップボードづくりをしたことで工事費用が抑えられている。
三世代旅行、県外からのグループ旅行の他、アジアやヨーロッパからの観光客の利用もある。
審査員コメント
伝統的な日本建築を極力活かして再生した点が大変評価できる。
また、工事費用を抑えるために、自分たちでできることは自ら調べて施工を行っている点も評価でき、空き家の再生を検討している方々のモデルとなるような好事例である。
県外だけでなく、海外からの利用者もあるということで、今後、香川県の観光拠点としてたくさん利用されることを期待する。
最優秀賞 (小豆島町空き家資源活用住宅 坂手1号)
明治時代の2階建て住宅を平屋建ての町営賃貸住宅へ
改修後 改修前
改修後 改修前
改修後 改修前
物件データ
設計者・施工者 |
設計者:小豆島町住まい政策課 施工者:有限会社植松工務店 |
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所在地 | 小豆島町 |
敷地面積 | 168.5㎡ |
床面積 | 57.1㎡ |
工事費用 |
約1,189万円 |
改修後の用途 | 戸建て賃貸住宅 |
特徴
海を望む傾斜地に立地する戸建て住宅。
解体を考えていた所有者から小豆島町が物件を借り上げ、再生した事例。今後移住者向け賃貸住宅として利用される。
物件へのアクセスは幅員60cm程度の里道しかなく、改修にあたっては資材の搬出入を小型運搬車で行ったり、浄化槽を近隣地から小型クレーンで積み込んだりと、大変な苦労があった。
2階部分を減築した際に発生した丸太の棟木を再利用したり、降ろした瓦をチップ化して庭の砕石に再利用するなど、予算が限られた中で最大限のコスト削減に努めた。
外壁の古材張り、フローリング張り、壁への珪藻土塗りなどを、地元の高校生や近隣住民の方、空き家の改修に興味のある移住者などとともにワークショップ形式で行い、空き家再生を介したコミュニケーションも行われた。
審査員コメント
立地の都合により、再生が非常に難しいと考えられる物件に命を吹き込んだ好事例である。
施工性の悪さから工事費用は高額となったものの、県外からの移住や地元住民の交流など、コストに代えがたい価値を生んだのではないかと考えられる。
優秀賞 (おむすび座)
築100年を超える住宅を子育て世代が集う飲食店へ
改修後 改修前
改修後 改修前
改修後 改修前
物件データ
設計者・施工者 | 株式会社しわく堂 |
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所在地 | 三豊市 |
敷地面積 | 522.34㎡ |
床面積 | 172.05㎡ |
工事費用 | 約1,600万円 |
改修後の用途 |
飲食店 |
特徴
閑静な住宅街に立地する、子育て世帯に大きな支持を得ている「寝転がれるお座敷ビュッフェ」。
再生前の物件は、木造平屋建ての母屋にコンクリートブロック造の増築部分で構成されており、耐震性を考慮して増築部分は撤去。母屋部分を瓦屋根のみ取り替えて再生。
築100年を超える古民家ならではのダイナミックな屋根架構が映える吹抜け空間に、優しい畳敷きの空間が広がる。中央には絵本ライブラリーのある安全なキッズスペースを配置し、その周りでパパやママは安心して食事を楽しめる。
子ども用手洗い場、授乳・おむつ替えスペースなども整備されており、子ども会などの団体での貸し切り利用などにも利用されている。
審査員コメント
入念なマーケティング調査やアンケートを実施し、利用者目線に立った事業計画を行っている点が評価できる。
その結果としてSNSでも非常に多くのフォローを得ており、飲食店としてだけでなく、古民家再生の好事例としても多くの人々に注目されているのではないか。
優秀賞 (島田様邸)
築100年を超える住宅を住宅兼ショールームへ
改修後 改修前
改修後 改修前
改修後 改修前
物件データ
設計者・施工者 |
ななはち工房 |
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所在地 | 三豊市 |
敷地面積 | 1,137.6㎡ |
床面積 | 90.2㎡ |
工事費用 |
約1,700万円 |
改修後の用途 | 住宅(ショールーム) |
特徴
「家って、一生に一つじゃなくてもいい」というライフスタイルを提案していくため、再生した空き家を再販する事業のフラッグシップとなる住宅。
空き家が住宅として再生されるケースが少ないことに着目し、自ら物件を購入して再生した上で、生活しながら、時にはモデルハウスとして広く公開している。
外観は、古くからの日本建築の姿が残されている。玄関の大きな鉄扉は、古民家になじむような素材を採用。南面には大開口を設け、前方に広がる美しい山並みを望むことができる。
内装は、間接照明を多く取り入れるなど、現代人の感性に合うホテルライクな設備を採用。アイランドキッチンやカップボードには木材が利用されている。
審査員コメント
古くからの日本建築の外観にこだわる一方、外観からは想像できないようなモダンな内装を採用している点が興味深い。
今後の中古住宅市場の活性化に寄与することを期待したい。